ダイビング後の飛行機はなぜ危険?減圧症の仕組みや待機時間を解説
体験やツアーなどでダイビングを楽しみたい方は、ダイビング直後の飛行機搭乗は避けてください。身体に重篤な症状を引き起こす恐れがあります。
今回は、なぜダイビング直後に飛行機へ搭乗してはいけないのか、どのような症状を引き起こすのか、ダイビングに関するリスクについて解説します。予防方法や搭乗までの時間なども解説するので、旅行でダイビングを楽しみたい方はぜひ参考にしてみてください。
ダイビングは水中だけでなく、その前後も安全への配慮が欠かせません。レジャーを最大限楽しむためにも、安全なダイビングに関して理解を深めましょう。
ダイビング後の飛行機が危険な理由
ダイビング終了後、飛行機に搭乗すると「減圧症」を発症するリスクがあります。減圧症は、皮下気腫(皮下に空気が溜まる)や関節・筋肉の痛み、呼吸困難などを引き起こし、命の危険を伴います。
ダイビングの経験や実績とは関係なく、誰でも起こりうる症状なので、ダイビング直後の飛行機搭乗は必ず避けてください。
減圧症とは?仕組みと症状、ダイビング中の予防方法
減圧症の仕組みと症状、予防方法について見ていきましょう。リスクを避け、効果的な対策を講じるには仕組みを理解する必要があります。
減圧症の仕組み
減圧症を発症する原因は、タイビング中に体内へ蓄積された窒素の膨張です。ダイビングに使用されるボンベには、酸素(約20%)と窒素(約80%)が含まれています。
水圧の高いエリアは、地上よりも体内組織・血液・筋肉へ窒素が融解しやすい環境です。潜水により窒素が体内に蓄積した状態で気圧の低いエリアへ行くと、体内で窒素が気化し、気泡を発生させます。
この気泡によって組織の圧迫や酸素供給の阻害などを引き起こし、減圧症につながります。つまり、飛行機に搭乗することが原因ではなく、気圧の急激な変化が減圧症の主な原因です。
減圧症の症状
減圧症の主な症状は次のとおりです。
<減圧症の主な症状>
- 皮膚がチクチク痛む
- 四肢関節や筋肉の痛み
- 皮下に空気が溜まる
- 息苦しさを感じる(呼吸困難)
- めまいや吐き気
- 起立障害や意識障害
症状次第では重篤な状態に陥り、命の危険を伴うケースもあります。ダイビング後は減圧症も含め、他の疾患を引き起こしている可能性もあるので、体調不良の際は必ず医師の診断を受けましょう。
減圧症予防に必須なダイビング中のルール
ダイビング中は、潜水・浮上のルールを守って減圧症を防ぎましょう。
<ダイビング中のルール>
- 浮上する際はゆっくりと(18m/分を超えない)
- ディープストップを活用する
次項で、それぞれのルールについて詳しく解説します。
浮上する際はゆっくりと
水圧の急激な変化により、体内の窒素は気化する恐れがあるため、浮上は18m/分を超えないスピードで行いましょう。ただし、3m/分以下のスピードでは、逆に窒素の気泡が増えるリスクがあるため、適度な浮上スピードを維持する必要があります。
また、水深5~6mまで浮上した際は、3~5分は停止して急激な水圧の変化が起きないよう注意してください。停止時間は最大10分までが目安です。
ツアーや体験ダイビングであれば、インストラクターの指示に従いつつ、同じスピードで浮上するよう意識しましょう。
ディープストップを活用する
ディープストップとは、深く潜水した際に最大水深の半分程度で停止することです。水深25m付近に20分以上潜る場合、水深15m付近で2分半停止します。
注意点として、ディープストップは前述した水深5~6mにおける停止の代用となりません。ディープストップを活用した際も、必ずゆっくり浮上するよう意識しましょう。
ダイビング後、飛行機に乗れるのは18~24時間後
ダイビング後、飛行機に乗れるのは18~24時間後を目安としてください。18時間以内の搭乗では十分に窒素を排出できておらず、減圧症を発症するリスクが高くなります。
飛行機の搭乗までは、海抜0m付近のエリアで過ごしましょう。航空会社によっては、ダイビング後24時間以内の搭乗を拒否しているケースもあります。
飛行機に搭乗→ダイビングはOK
飛行機への搭乗後、ダイビングを楽しむのは問題ありません。「減圧症の仕組み」でも解説したとおり、減圧症はダイビング中に体内に蓄積した窒素が原因で起こります。
そのため、「飛行機に搭乗→ダイビング」では減圧症のリスクがありません。ただし、飛行機搭乗後に体調不良を感じる際は、ダイビングを控えて体調回復に努めてください。
飛行機搭乗後は体調不良に注意
飛行機の搭乗→ダイビングでは減圧症のリスクがないものの、以下の状態の場合はダイビングを中止しましょう。
<ダイビングを中止すべき状態>
- エコノミークラス症候群(血行不良による血栓から疾患を引き起こす状態)
- 飛行機内での飲酒
エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢を維持することで血液が固まりやすくなり、血栓ができる状態です。飛行機の搭乗後、脚のむくみや腫れ、感じたことのない息切れなどがある場合はエコノミークラス症候群の可能性があります。ダイビングを中止して医師の診察を受けましょう。
また、飲酒による脱水は減圧症につながるリスクがあります。窒素の排出は血液循環により行われますが、脱水状態になると血液循環が悪化し、窒素の排出が滞るためです。飲酒後は少なくとも12時間の間隔を空け、万全の体調でダイビングに臨みましょう。
飛行機の搭乗日前に減圧症を予防するポイント
飛行機の搭乗前は、減圧症のリスクを下げるためにも以下のポイントを押さえましょう。
<減圧症を予防するポイント>
- 可能な限り浅瀬を泳ぐ(最大6mまで)
- ダイビングは1日1本までに抑える
- 水面休息を多く取る
減圧症のリスクが高まるのは、水圧が高まる水深6mを超えたあたりとされています。さらに、ダイビングの回数が増えるほど、体内に蓄積する窒素も増えるため、可能な限り回数を減らすことも大切です。休息もしっかり取り、身体への負担を減らすよう心がけましょう。
また、上記のポイントはあくまでも予防なので、飛行機搭乗までは18~24時間の間隔を空ける必要があります。
飛行機の搭乗以外で減圧症に注意すべき行動
減圧症は、飛行機の搭乗以外でも発症するリスクがあるので、以下の行動に注意してください。
<飛行機の搭乗以外に注意すべき行動>
- 標高400m以上の場所へ移動する
- ダイビング直後の温浴
飛行機に限らず、高所への移動は気圧が変化するため、減圧症を引き起こす恐れがあります。ダイビング後18~24時間は、海抜0m付近のエリアで休息を取ってください。
また、ダイビング後の入浴や熱いシャワーは、体内に蓄積した窒素を気泡化させる可能性があります。血液循環の促進により窒素の排出を促すとも言われていますが、急激な温度変化を身体に与えないよう注意してください。
上記以外にも、体調不良や水温の急激な変化、潜水・浮上の繰り返しなどは、減圧症を引き起こす要因です。体験ダイビングであれば、インストラクターの指示に従い、危険な行為は避けましょう。
まとめ
減圧症は、ダイビングをする人が誰しも発症するリスクのある疾患です。初心者・ベテランに係わらず、予防・対策に取り組まなければなりません。ダイビングの後は18~24時間の間隔を空け、飛行機に搭乗しましょう。搭乗前日は体調を万全に整え、高所への移動も避けてください。
減圧症の予防も含め、ダイビングを安全に楽しみたい方は、「アクア・ブーチェ」のライセンス取得をご検討ください。ダイビング初心者の方も受講できるほか、熟練のインストラクターによる丁寧な指導をさせていただきます。減圧症などのトラブルを防ぐためにも、確かな知識・スキルを身につけましょう。