ダイビングの基礎知識
2024年08月07日

ダイビング中に気を付けたい窒素酔いとは?症状や原因・予防方法も紹介

慶良間諸島ダイビング講習
ダイビングは水中の綺麗な景色を生で楽しめる一方、体に異常をきたすことも少なくありません。なかでも「窒素酔い」は、ダイビング初心者が発症しやすいもののひとつとされており、気を付けておかないと重大な事故が発生する恐れがあります。

そこで今回は、窒素酔いの概要と原因、主な症状についてご紹介します。窒素酔いを発症したときの対策や予防方法についてもまとめたので、これからダイビングをはじめたい方はぜひ最後までお読みください。

 

窒素酔いとは

窒素酔いとは、通常よりも判断力が低下し、正常に物事を考えることができない状態などになること。窒素中毒との言い方もありますが、お酒を飲んで酔っぱらったときの状態に症状が類似していることから、窒素酔いと呼ばれるようになりました。

 

窒素酔いの原因

窒素酔いを引き起こす原因は、高分圧の窒素を体内に摂取することにあります。私たち人間が日常生活において吸い込んでいる空気のうち、約8割は窒素です。常日頃から窒素を体内に取り込んでいることになりますが、地上では窒素による影響はありません。

しかし、水中では地上とは異なり水圧がプラスされるため、ダイビング用のタンクに加わる圧力が増加。深くまで潜るほど圧力が増し、それにともないタンク内の空気に含まれている窒素自体の圧力も高くなります。

ダイビングの際はタンクによって酸素を吸収するため、高圧状態の窒素も吸い込むことになるのです。タンクから体内へと侵入し、血液に溶け込んだ窒素は体に作用し、麻酔を打ったときのような状態が見られるなど悪影響をおよぼします。

 

窒素酔いの主な症状

窒素酔いの主な症状は以下のとおりです。

 

<窒素酔いの主な症状>

  • 思考力が低下する
  • 注意力が低下する
  • 方向感覚を失う
  • 反応や体の動きが鈍くなる
  • 気持ちが高揚する
  • 意味のないことで笑ったり急に落ち込んだり、精神不安定になる
  • 幸福感が増す
  • パニックになる
  • 気が大きくなる

 

窒素酔いの主な症状の例を見てみると、飲酒中あるいは飲酒した後で体に出るような症状が多いことがわかります。どの症状も直接的に命の危険をおよぼす可能性が低いものばかりですが、窒素酔いは一歩間違うとダイビング中に命を落とすきっかけになり得るのです。

 

窒素酔いが危険な理由

ダイビングにとって窒素酔いが危険とされる理由は、「本人に窒素酔いの自覚がないこと」と「正常な判断力がなくなること」の2点です。

窒素酔いは本人が気付かないうちに発症しているケースが多く、判断力や思考力が低下しているにもかかわらずダイビングを続けると、万が一の際にリスクを回避する行動がとれなくなる可能性があります。

たとえばダイビング中に窒素中毒を発症し、水中で方向感覚を失い、上下すらわからなくなったと仮定しましょう。この場合、本人は水面と深海の方向が理解できない状態ですが、窒素中毒の自覚がないため自分の方向感覚に疑問を持つことはありません。水面へ向かって浮上しているはずが、実はひたすら潜り続けていて、結果的に重大な事故につながる可能性が高まるのです。

また、判断能力が失われることは、不測の事態が発生しても即座に適切な対応がとれないリスクがあることを意味します。水中で活動するダイビングでは窒素酔いによるパニックが重大事故につながるケースもあるため、甘く見てはいけません。

 

窒素酔いになりやすい水深

窒素酔いを引き起こしやすい水深の目安は20~30mです。水中では水深10mごとに1気圧増えるため、水深10mの場合は大気圧と水中の1気圧を合わせた2気圧になります。水深20mになった場合はさらに水中の1気圧が加算され、合計3気圧と計算できます。

合計した気圧の数値が増えるほど窒素の圧力も増加。3気圧ないし4気圧あたりから窒素中毒になりやすいとされているため、20mを超えて潜水する場合は十分注意しながらダイビングを行う必要があります。あくまでも窒素酔いになりやすい水深は目安であり、個人差があることを認識しておきましょう。

 

窒素酔いの見分け方

窒素酔いを発症したときの見分け方は、症状と水深が判断材料になり得ます。水深20mを超えており、なおかつ体の動かしにくさや判断力の低下などの症状が現れたら、窒素酔いを発症していると考えていいでしょう。

また、一緒にダイビングを楽しんでいる方が思わぬ方向へ泳ぎ始めた、あるいは不自然な行動をとり始めたときも窒素酔いを疑うサインです。ダイビングを中止し、適切な方法で対処しましょう。

 

窒素酔い発症時の対処方法

窒素酔いを発症したときは、水深の浅い場所まで浮上することが大切です。窒素酔いは高圧の窒素が血液に溶け込むことで症状が現れます。圧力の低い位置まで移動できれば窒素酔いが緩和されるため、水面または水深が浅い場所まで移動し、症状が改善するのを待ちましょう。

一緒に潜っている方やダイバーに窒素酔いの症状が見られたときも同様に、水深が浅いところまで浮上してください。浅いところまで移動しても症状が残る、あるいは体に違和感があるときは速やかに医療機関を受診しましょう。

なお、急速に浮上すると減圧症を引き起こす恐れがあります。減圧症はめまいや関節の痛みなどの症状が特徴で、重度になると呼吸困難など命を落とす危険性がある危険な病気です。できるだけゆっくりと、スロースピードでの浮上を心がけてください。

 

窒素酔いの予防方法

ダイビング中の窒素酔い発症を予防するには、水深や当日の体調に気を配ることが重要です。

 

水深は10~25mを基準にする

窒素酔いを防ぐには水深の浅いところから少しずつ深く潜るようにしましょう。ダイビング初心者は経験者と比較して窒素酔いの発症リスクが高いため、とくに推進には注意が必要です。はじめのうちは10mよりも深い場所へは潜らないようにしてください。

ダイビング経験者も水深20~25mを目安にし、それ以上の深さまで潜水するのは避けたほうが無難です。ただし水深20m未満でも窒素酔いになるケースは少なくありません。水深が浅いからと油断せず、常に注意を払いながらダイビングを楽しみましょう。

 

ダイビングは体調を万全にして行う

体調に不安を感じる日は、無理せずダイビングを中止することが賢明な判断です。窒素酔いは薬あるいはお酒の影響を強く受ける傾向にあり、前日に薬を服用したりお酒を大量に飲んだりした場合は発症しやすくなります。あわせて、疲労感も窒素酔いを引き起こすリスクを高める原因のひとつです。

ダイビング前日と当日は薬やお酒を飲まず、体調を整えて行うようにしてください。疲労を感じたら浮上し、水から上がりましょう。

 

まとめ

窒素酔いとは、血液中に溶け込んだ窒素が原因で潜水中に引き起こされる症状のこと。思考力・注意力の低下や方向感覚の喪失、気分の高揚など、酔っぱらったときに現れる症状と似ている点が特徴です。窒素酔いと命の危険について直接的な結びつきはないですが、症状が出ているときの行動が命を落とす結果につながることもあるため、ダイビングをする際は水深などに注意しましょう。

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