ダイビングの基礎知識
2024年07月29日

減圧症とは?ダイビング中に発症する理由や症状をわかりやすく解説

海中の泡
ダイビングをはじめる前に、ぜひとも知っておいていただきたいのが「減圧症」です。減圧症は重症化することもある病気であり、万が一に発症した場合は適切な治療が必要になります。

そこで今回は減圧症について、主な症状や発症理由、治療方法をご紹介します。減圧症を予防するために気を付けたいことも解説するので、ダイビングに興味がある方はぜひ最後までご覧ください。

 

減圧症とは

減圧症とは、気圧が高い場所から低い場所へ移動したとき、血中などに溶け込んだ窒素が気化し、気泡を生み出す病気のことです。

ダイビングの後に発症しやすいことから、別名「潜水病」とも呼ばれます。

 

主な症状

減圧症の主な症状は筋肉や関節の痛み、意識障害、めまい、吐き気、腕や足の麻痺など多岐にわたります。症状が軽度の場合は「I型減圧症」、重度な状態は「II型減圧症」に該当します。

 

<減圧症の主な症状>

  • 頭痛
  • 食欲不振
  • 疲労
  • 体の倦怠感
  • 皮膚のかゆみや痛み
  • 息苦しさ
  • 血圧低下
  • 知覚障害

 

減圧症の初期症状は頭痛や倦怠感などを発症するケースが多く、I型減圧症では足と腕の痛みと皮膚の赤み、腕のむくみなどが現れやすいです。

II型減圧症に移行すると脊髄や脳、内耳などにも影響し、体の痛みや難聴、排便・排尿のコントロールが困難になるなどの症状が見られることがあります。重症化した場合は死に至るケースもあるため、注意が必要です。

 

減圧症の発症理由

減圧症を発症する理由は、血液や組織に溜まった窒素です。ダイビング中に使用するタンクには窒素8、酸素2の割合で空気が含まれており、この空気を水中で吸うことで体内に酸素が供給されます。

水中では圧力が高く、地上と同じ呼吸量でも空気を体内に取り込む量は増えるため、体の組織や血液に溶け込む窒素の量も増加するのです。

組織や血液に多量の窒素が溶け込んだ状態で浮上すると、体内では窒素が気泡となり臓器の血管を塞ぐ、あるいは血栓を生むなどの状態になります。痛みや炎症など、さまざまな症状や障害を引き起こします。

 

減圧症は何m潜水すると発症しやすいか

減圧症は8mより深くまで潜水すると発症しやすいとされています。減圧症を引き起こす量の窒素を体内に取り込むには8mを超える深さの気圧が必要であるため、8m以内の深さであれば発症リスクを軽減できるでしょう。

一方で、深さ6m未満の深さでのダイビングは減圧症のリスクがほとんどなく、比較的安全に潜りやすいともいわれています。代わりに動脈ガス塞栓症になる危険性は少なくないため、ダイビングの際は気を付けましょう。

 

減圧症を発症するタイミング

減圧症を発症するタイミングは、軽度の場合はダイビング中ではなく、水中から浮上した後に発症するケースが比較的多いです。基本的に水面に浮上してから48時間が経過してから発症するケースは少ないですが、わずかに現れていた症状に気付かず、後になって発症していたことに気付くこともあります。

重度の減圧症の場合は、ダイビングを終えたタイミングや水中を浮上しているときの発症が多いです。減圧症の症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診してください。

 

減圧症を発症する頻度

減圧症になる頻度は低く、10,000回のダイビングに約1回の割合で発症するといわれています。数回に1回など高確率でなり得る病気ではないことを覚えておきましょう。

ただし発症頻度が少ないとはいえ、減圧症が現れるリスクは0ではありません。少しでも気になる症状が現れたらすぐに医療機関を受診するなど、迅速かつ適切な対応を心がけてください。

 

減圧症の診断方法

減圧症が疑われるケースでは、医師による総合的な判断により発症の有無が診断されます。現在、減圧症の診断基準に明確なものはなく、特別な診断方法もありません。よって受診した医療機関の医師に判断が委ねられます。

減圧症の疑いで受診すると、症状をはじめ潜水した深さや既往歴などを医師に伝えます。またCT検査や超音波検査などの画像診断をおこなうこともあり、減圧による気泡が画像に写ったときは減圧症と診断されることも。ただし、画像に気泡が写る確率は極めて少なく、画像診断で減圧症の証明は難しいです。

なお、高齢者がダイビング終了後に体調不良を訴えた場合は血液検査など、さまざまな検査方法で原因を探ることが多いです。理由としては、高齢者が体調不良を引き起こす原因として、減圧症以外の病気が関係している可能性が捨てきれないことが挙げられます。

 

減圧症の治療方法

減圧症の治療をおこなう際は「高気圧酸素療法」が用いられます。高気圧酸素療法により、体内に生じた窒素の気法を体外に排出可能です。

高気圧酸素療法では、チャンバーとも呼ばれる、大気圧以上に気圧を高くした「高気圧酸素治療装置」に収容された状態で治療がおこなわれます。内部では高濃度の酸素を吸入することで、血液や組織の内部に溜まった窒素の気法を再び溶解。窒素を放出して、体内の血液循環や酸素が足りていない部分に酸素を送り込みます。

なお、医療機関にチャンバーが導入されていないときは、フェイスマスクから高濃度の酸素を吸入する方法で治療します。減圧症の急性期に用いられる治療方法です。

 

減圧症予防で気を付けたいこと

減圧症の発症予防で気を付けたいことは、ダイビング前後と最中のタイミングで異なります。

 

ダイビング前におすすめの予防方法

ダイビング前は、減圧症の発症リスクが高くなる原因を確認しておきましょう。発症リスクを高める可能性のある主な原因は以下のとおりです。

 

<減圧症のリスクを高める主な原因>

  • 高齢
  • 心臓に関する病気(心房中隔欠損、卵円孔開存など)
  • 脱水
  • 疲労
  • 肥満

 

減圧症の発症リスクが高いと思われる方は、あらかじめ医師に相談してみましょう。ダイビングしても良いか判断を仰いでください。

 

ダイビング中におすすめの予防方法

ダイビング中は長時間の潜水を避け、深いところまで潜らないようにするといいでしょう。あわせて浮上スピードもゆっくりにして、水深が急激に変わらないよう意識してください。

水面に浮上する際の適切なスピードは1分あたり18m未満、1秒に換算すると30cm未満になります。水中で吐き出した空気の泡が水面に上昇するスピードを目安とし、追い越さないように浮上するのがおすすめです。

水深3~5mあたりまで潜ったら一度停止し、3~5分待つと圧力の変化に対応しやすくなりますよ。

 

ダイビング後におすすめの予防方法

ダイビング終了後は飛行機の利用を避けてください。ダイビングをしてから12~24時間以内に飛行機で移動すると、減圧症になるリスクが高まるリスクが指摘されています。

潜水後も安全に過ごせるよう、12~24時間は飛行機を利用せず、海抜0mのエリアに滞在して適切に休息をとってください。

 

まとめ

減圧症とは、体内に溜まった窒素が気体となって血液や体の組織に影響をおよぼし、頭痛や疲労、知覚障害などを引き起こす病気のこと。ダイビング終了後に発症するケースが多く、もしも減圧症になった場合はチャンバーやフェイスマスクを利用して酸素吸入をおこないます。ダイビングの前後と最中に気を付けるべきポイントを踏まえた上でダイビングを楽しんでください。

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