ダイビングの基礎知識
2024年07月02日

エンリッチドエアーとは?魅力や注意点・使用方法について徹底解説

エンリッチドエアーのタンクを背負うダイバー
ダイビングは海の世界を探索する魅力的なアクティビティですが、普段とは違う環境で行うため、安全性には特に配慮が必要です。

安全なダイビングをサポートする方法として注目されているのが、エンリッチドエアーを使用したダイビングです。今回は、エンリッチドエアーの概要や魅力、使用する際の注意点について解説していきます。

 

エンリッチドエアーとは

エンリッチドエアーとは、通常の空気よりも高濃度の酸素を含む空気のことです。ダイビング中は空気が充填されたタンクから呼吸を行い、中身は通常の空気と同じ約21%の酸素と約78%の窒素、その他のガス1%の組み合わせが一般的です。

しかし、エンリッチドエアーは酸素の割合がそれ以上で、22〜44%の酸素で構成されているのが一般的。さらに、レクリエーションダイビングで使われるエンリッチドエアーは、32%または36%の酸素を含んでいます。

 

エンリッチドエアーとナイトロックスの違い

ダイビングに関する専門用語として、「ナイトロックス」という言葉も耳にするかもしれません。ナイトロックスとは、酸素と窒素が混合された空気全般を指す言葉です。ナイトロックスの中で、酸素の割合が22%を超える空気がエンリッチドエアーとなります。

通常、レクリエーションダイビングに使用されるのはエンリッチドエアーであり、その他の深海探検やテクニカルダイビングには酸素濃度が21%未満のナイトロックスが使われることもあります。

 

エンリッチドエアーの歴史

エンリッチドエアーの発展は、ダイビング界に革命をもたらしました。エンリッチドエアーが広く普及したのは、1990年代後半からと比較的近年です。

酸素を多く混合したガスは医療用として古くから使われていましたが、ダイビングに使われてからは新しい可能性が開かれたといえます。

 

エンリッチドエアーの魅力

エンリッチドエアーには、以下の5つの魅力があります。

 

  • 長時間のダイビングが可能
  • 窒素酔いのリスクの低減
  • 減圧症の予防
  • 連続ダイビングの実施
  • 疲労軽減

 

長時間の潜水が可能

エンリッチドエアーを使用することで、通常の空気よりも長い時間潜水できるのが大きな魅力です。潜水には潜水できる時間が設定されており、その制限を超えるとさまざまなリスクが生じるため、時間内に浮上しなければなりません。

たとえば18mの潜水を行う場合、通常の空気を使用すると最大で56分潜水できます。一方、32%のエンリッチドエアーを使用すると、最大で95分の潜水が可能です。長時間ダイビングできることで、水中での探索や観察に十分な時間を費やすことができます。

 

窒素酔いのリスクの低減

窒素酔いとは、高圧の窒素を吸入することによって引き起こされる中毒症状です。窒素酔い自体は体に大きな危険をもたらすものではありませんが、思考力の低下や方向感覚の喪失などの症状が現れるため、潜水中に窒素酔いが起こると危険です。

エンリッチドエアーは通常の空気よりも窒素の割合が低いため、窒素酔いのリスクを軽減することができます。ただし、深海ではエンリッチドエアーを使用していても窒素酔いが発生する可能性があるため、注意が必要です。

 

減圧症の予防

減圧症は、潜水中に体内の気圧が変化することで起こる病気です。エンリッチドエアーを使用することで体内に窒素が残りにくくなり、減圧症の予防につながります。

減圧症は命にかかわる危険な病気であるため、予防することで安全性が向上します。

 

連続ダイビングの実施

通常、ダイビングを1本行ったあとは窒素の放出のために休息が必要です。たとえば、1時間以上水面で休息をとれば2本目に15mの水深を35分潜ることができます。

しかし、エンリッチドエアーを使うと体内に残る窒素が少なくなるため、上記の場合は1時間以内で2本目を始めることが可能です。

 

疲労軽減

エンリッチドエアーを使用すると、通常の空気でダビングした場合よりも疲れにくいといわれています。

ダイビング中に疲れや目のかすみを感じる人は、エンリッチドエアーを使用することで疲労感が軽減される可能性があります。ただし、科学的な根拠は確立されていないので注意が必要です。

 

エンリッチドエアーの注意点

エンリッチドエアーにはさまざまな魅力がありますが、その使用には以下のような注意が必要です。

 

  • 絶対的な安全性は保証されない
  • 潜水の深さには制限がある
  • すべてのダイビングショップで使用できるわけではない

 

絶対的な安全性は保証されない

エンリッチドエアーを使用することでダイビングの安全性は向上しますが、それでも絶対的な安全性が保証されるわけではありません。特に深海でのダイビングでは、減圧症や酸素中毒などのリスクが起こることがあります。

「エンリッチドエアーは必ず安心!」と過信すると、重大な事故を引き起こすこともあります。必ずリスクを理解し、慎重に行動するよう心がけましょう。

 

潜水の深さには制限がある

酸素中毒を防ぐためにも、エンリッチドエアーを使用する際には潜水の深さには厳密な制限があります。酸素中毒は、通常の空気であれば57mで起きやすくなります。

しかし、酸素濃度が32%の場合は34m、酸素濃度が36%の場合は29mとどんどん潜れる水深が浅くなるのです。酸素中毒などの健康リスクを最小限に抑えるためにも、深海への潜水は慎重に計画し制限深度を守りましょう。

 

すべてのダイビングショップで使用できるわけではない

エンリッチドエアーを使用できるかどうかは、利用するショップによって異なります。エンリッチドエアーを前提にダイビング計画を立てている場合は、事前に確認しておかないと計画を考え直さなければいけません。

エンリッチドエアーに慣れてしまうと、通常の空気でのダイビングがやりにくく感じる可能性もあります。

 

エンリッチドエアーの使用方法

エンリッチドエアーを使用する際には、適切な講習を受けることが必要です。PADIなどの認定団体では、エンリッチドエアーの講習を提供しています。学科講習はeラーニングを通じて自宅で学習することもできるため、仕事などで忙しい方も気軽に参加できます。

エンリッチドエアー講習には海洋実習もあるため、実践しながらスキルを身につけることができます。ただし、ショップやスクールによってエンリッチドエアーの取り扱いは異なるので確認しておきましょう。

 

まとめ

エンリッチドエアーは、ダイビングの安全性を向上させる有益なスキルです。その魅力を最大限に活用するためには、適切な講習を受け注意点を理解した上で慎重に計画を立てることが重要です。ダイビングをより安全で楽しいものにするために、エンリッチドエアーの利用を検討してみましょう。

ダイビングには、エンリッチドエアーだけでなくさまざまなスキルがあります。安全に潜れてスキルの高いダイバーになるには、横浜・伊豆のダイビングショップ「アクア・ブーチェ」へお問い合わせください。世界的に有名なNAUIダイビングライセンスがとれるダイビングスクールであり、さまざまな種類のライセンスの取得もできます。