【ダイビング技術とスキルアップ】サイドマウントについて考えてみる(その4)【横浜のダイビングスクールのブログ】
【ここからが本題です】
ここまでのお話で、タンクを2本持っていく目的は、レギュレータがトラブルを起こしたときに、現実的な行動で、安全に余裕をもってエグジットすると言う事であることをご理解いただいたことと思います。
問題は二つあります。
一つは持ち方。背中が良いか脇が良いか。
背中に2本、背中に1本+脇に1本、両脇に1本ずつ。の3パターンがあります。
もう一つは、同じ容量のタンク2本が良いか、メイン+バックアップ(少し小さい)が良いか。
持ち方については後に回して、まずはこの話から始めましょう。
【問題を考える上での前提条件】
これを考えるにあたっての、前提条件を整理します。
・基本的には無限圧限界内でのダイビングとするが、アクシデントによって減圧停止を行う事を考慮する。
・二つのタンク+レギュレータのセットのどちらが故障するかは事前には分からない。
・水深40mへのディープダイビング
・二つのタンク+レギュレータのセットのいずれか一つが故障したら、浮上開始できる水深まで平行移動してから浮上を開始する。
・バディーへのエアの供給は考慮しない(バディーもバックアップ装備を持っている)
【トラブルが起こる最悪のタイミングとは?】
同一の容量タンクを2本持って行くのと、バックアップ用として小型のタンクを持って行くのとどちらが良いでしょうか?
空気の量としては同一容量タンク2本の方いのですが、その必要性について考えてみましょう。
レギュレータがトラブルを起こす最悪のタイミングはいつでしょうか?それは最深部での滞在から浮上を開始するタイミングです。そのダイビング中で最も体内に窒素が蓄積されている状態であり、そこからの浮上プロセスは計画時と変えようがないからです。
それ以前のタイミングでレギュレータがトラブルを起こした場合は、そこで潜水計画を変更することが可能です。簡単に言うと、それ以上深い場所に行かずに、安全なコースに切り替えて浮上を開始することが可能です。エアもそれほど消費していないので余裕が十分あります。
最深部からの浮上開始タイミングでは、トラブルがあろうとなかろうと同じ浮上手順を踏まなくてはなりません。本当の緊急時で水面への浮上だけを考えるのであれば、その場で垂直に浮上すればよいのですが、前述のように危険を伴います。
地形に沿って少しずつ浅い場所に移動してから水面に浮上するという手順を踏もうとすると、計画していたコーストあまり変わらないコースを取ることになってしまいます。緊急事態だからと言って計画時とあまり変わらない空気量が必要と言う事です。
【具体的なシミュレーションをしてみましょう】
エアの消費率を毎分15リッターとします。ビギナーにとっては少し厳しい見積もりですが、ディープダイビングをしようと思うレベルの人にとっては妥当な消費率だと思います。
ダイビングのプロフィールは
水深10mに5分
水深15mに5分
水深40mに5分
水深10mに15分(40mからの浮上に要する時間は含まれていない)
水深 5mに5分(10mからの浮上に要する時間は含まれていない)
深度を下げる過程では、分数に潜行を含み、浮上時は含まない。
よって、40m時点からの経過時間には浮上時間が加算される。
潜行速度は毎分22m。浮上速度は毎分9m。
潜水時間の総計は39分になります。
エア消費率(RMV)は15リッター/分なので、エアの消費量は1500リッター弱。
10リッタータンクを使うと約50気圧残る計算です。
最深部40mから浮上を開始しようとした瞬間のエア消費量は約713リッター。残り1287リッター。残圧120気圧(切り捨て)。となる計算です。
元々50気圧残して浮上する計画ですので些細な誤差は気にせず、最深部からの浮上に1200リッターのエアがあれば、計画どおりの行動をとることが出来ると言う事です。
10リッタータンクを2本持って行くのであれば十分すぎる容量です。
6リッターのタンクをバックアップとして持って行けば、最深部からの浮上時にメインタンクと同一の空気量となります。
メインタンクの残圧が120気圧になるまでに最深部からの浮上を開始するのであれば、6リッターのバックアップタンクで十分だと言う事です。ただし、一定時間ごとにバックアップタンクのバルブを開けて、フリーフローを起こさないかのチェックをしなければなりません。でも、バックアップタンクはサイドマウントなので、バルブは手元にありますから操作は簡単です。
それ以上長く最深部に留まっていたいですか?
実はある減圧計算アプリを使って潜水計画を立ててみると、上記のプロフィールでも最深部から最短時間で浮上しようとすると、3mでごく短時間の減圧停止が必要との計算結果になります。
安全率など色々な要素がありますので、絶対ではありませんが、無限圧限界内でのディープダイビングを考えると、上記のプロフィールがほぼ限界に近いと言えるでしょう。
そもそも、こんな面倒な計算をしなくても、10リッタータンクを使用して、残圧120気圧で最深部から浮上開始する。それが前提なら6リッターのバックアップタンクを持って行けばいい。メインとバックアップの空気量が同じになるタイミングだから。もし、120気圧の残量で問題があるのであれば、そもそも潜水計画が間違っていると言う事になります。
空気量の観点では同じ容量のタンクを2本持って行っても過剰な余裕度なのです。
(その3)(その5)
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