2024年04月24日

【ダイビング技術】なぜ中性浮力が難しく感じるか


<中層をダイコンで水深を確認しながら進んでいる様子です>

<安全停止中に周囲を確認する為に上体を少し起こしている様子です>

大抵のビギナーは中性浮力が苦手だといいます。
なぜなのでしょうか?

一つには、最初の講習時のダイビング中の呼吸についての説明と、中性浮力を維持する為の呼吸パターンに矛盾があるからだと思っています。
もう一つは、本質的な問題で、リラックスした状態で水の中にいる事が出来ないからです。

講習中では、大きくゆったりとした呼吸をしなさいと言われます。決して呼吸を止めてはならないと。
でも、この呼吸パターンだと大きなマイナス浮力状態でないと吹き上がってしまいます。
呼吸でコントロール可能な範囲に収まる様に、BCを使って自信の浮力状態を調整すると、
大きく息を吸うと必ず浮き上がって行きます。
ゆっくりとしか息を吐かないとそのまま水面まで行ってしまいます。
物理学的には中性浮力状態の肺の容積になったら呼吸を止めないとならないのです。

この「息を止めない」「大きくゆったりとした呼吸」とは、
肺の過膨張を防ぐ、二酸化炭素を継続的に排出する、肺の換気率を高めると言う意味で正しいのですが、
そのままでは中性浮力の制御とは相容れない面もあります。
中性浮力と人体が必要としている呼吸の双方を満足させる為には、
通常陸上では必要としない呼吸パターンが必要となるのです。
この話はダイビングの教科書には直接的には載っていませんし、インストラクターが説明している場面もあまり見ません。

もう一つの大きな問題は、水中でのリラックスの問題です。
前述の呼吸パターンを説明して理解して頂いたとしても、水中でそれを実現出来ないのです。
毎週多くのダイバーが潜っているところを見ますが、大半のダイバーがストレスを抱えて潜っている様に見えます。
一言で言えば水慣れしていないと言う事なのでしょう。
特に中性浮力に関しては、多くの失敗体験から吹き上がるのが怖い、という感情が強くあるのです。
呼吸による浮力調整を理解していない人が、BCを操作したら必ず吹き上がるのは物理学的にも当たり前の現象です。
自分の浮力状態を把握出来ておらず調整方法も知らなければ、水深が上がって来てちょっとでも浮力がプラス側に振れたら後は水面までまっしぐらです。

呼吸による浮力コントロールは本当は凄く簡単なんです。落ち着いてさえいれば。
スクーバダイビングを始める前にスキンダイビングを日常的に楽しんでいる人は
いとも簡単にスクーバダイビングのスキルを習得します。水慣れしていると言う事なんですね。
水中でのリラックスが身に付いているのです。
私自身も元々スキンダイバーだったので、最初のプール講習でインストラクターの説明前にちょっと試してみたら意外と簡単でした。
本で読んでいたので理屈は理解していたんです。
初めて深いプールに入ったときに、インストラクターがもう一人の講習生を指導している間に、ちょっと試してみました。
体が浮き上がって来たら少しずつ息を吐いて行けば、浮上速度が遅くなって次第に沈下して行くのです。沈下に映る前に息を吐く速度を落とすと同じ水深を保てる。
ただそれだけです。
その時は、凄く面白く感じて感動しました。

まず水慣れして水の中でリラックス出来る様になる事が第一ステップです。
ガイドやインストラクターの事前の指示をちゃんと守れているか?
これが一つの指標だと思います。

次回はこの指標について書いてみたいと思います。